唐草銀河

「Q.V.Q.-キャトルヴァンキャトル-」
Ⅱ 『えめらるど・たぶれっと’84』創作ノート公開

Ⅱ 『えめらるど・たぶれっと’84』創作ノート公開 (3)

   ・主人公は14才、中学生の女の子。
 ・本当の家族、それとバラバラになってしまった秘宝「エメラルド・タブレット」を探す、ひと夏の冒険。
 ・舞台は竜の棲む王国。川の流れる肥沃な土地で、よっつの王国に四柱の神がいる。それぞれの王国はどうやら互いに反目しあってるみたいだ(神様は「柱」って数えるのですって! 竜はその神様の使いなの)。
 ・ある事情(たぶん、これが魔法の要!)から人々は海を禁忌とし、そこから目を背けている。
 ・この謎が「エメラルド・タブレット」に記されている模様。
 ・主人公は、川の水源のあるところからさらに下って海へと向かう。はず!
 ・そして多分、宝物は捨てられる。かも。かもっ!? 
 ・仲間はいるけど恋愛は無しになりそう(綾乃には「あんたには両想いの話はまだ無理」って言われた。余計なお世話だよ。恋愛なんてしたことないもん。でも、自分がしたことしか書けなかったら、こんな、王様だか戦士だかが出てきて魔法戦争が起きるような異世界冒険ファンタジーなんて書けないじゃん! けど、でも、綾乃のいうことはなんとなく、わかる。そういうことを言いたいんじゃないんだろうなって。ぼんやりとわかるから、きちんと反論できなくて胸が苦しい)。
 
 ここまで書いて、ノートを閉じた。絵ばかり描いてあるけど、これは小説のための創作ノートだ。あたしは文章を書くより先に、地図を描く。あとは登場人物の顔とか服装とか、そういうのを(自分の通う学校がモデルの学園恋愛物でさえ、あたしは校舎と彼らの住む街の地図と登場人物全員の家の外観とインテリアなんかを全部かいた)。とにかく山ほど時間を費やして「絵」を固めていく。もうそれさえすれば、筋なんてものは勝手に出来上がるから。けど、この小説は、今までで一番苦労してる。頭のなかにイメージがありすぎて、どうやってそれを描けばいいのかわからない。ものすごく入り組んでて、抜け出せない。上から、見られない。そこにある木の芽の色も形も手触りでさえわかるのに、樹木のカタチを見通せない。秘宝エメラルド・タブレットがどうしてバラバラなのか、それを集めてどうなるのか、ちっともわからない。もちろん、普通はその秘宝の力が発揮されたりその冒険の過程でキャラたちの働きがあったりで戦争が終結し平和になるってのが常道だし、バラバラの王国なら統一! だし、なんらかのマトマリみたいなものが結論部にあるのが物語の基本なわけで。でもあたし、最後にお宝のエメラルド・タブレットを捨てるような気がするの。どうしてか、そんなふうな予感がある。予感。そう、あたしにもそれが見えない。作者だけど作者になりきれない。だってこれは、夢で訪れる不思議の国。竜がいて、たくさんの川が流れる豊饒の土地。そこは、あたしの本当の居場所……。
 な~んてね!
 コドモってそういうの考えるよね? この家がほんとうの家じゃないって思うフロイトのファミリーロマンスみたいに、馴染めない現実に傷ついた自分をそうやって慰撫しているだけだ。あんたはうまくやってるじゃないと綾乃には言われそうだけど、あたし、小説を書いちゃう時点でもうダメだと思う。パパを代表選手にするわけじゃないけど、小説家ってなんだか情けない人が多い気がする。教科書で習うような小説家の人生ってなんか悲惨。そりゃまあ例外もいるだろうけどさ。現実生活で幸せなら、この世の誰も小説なんて読まないし、ましてや書いたりなんて絶対しない。不幸だから書くって言ってるんじゃないの。ほんとに希望も何もなく、どうしようもなく不幸でも書けないと思う。たぶん。
 あたしが初めて書いた小説は夢のはなしで、綾乃に絶賛された。他の子には伏線のはり方も下手すぎて話しの意味がわからないって言われたのに、綾乃はそんなの全然気にならないと大きな口をあけて笑った。綾乃いわく、あたしはあんたの最初の読者なんだからあんたが小説家になったらあたしの名前をいっとう初めにあげるべき、だそうだ。そういうものかなと首を傾げつつ、じつのところ、両親に捧ぐって書くより気楽に思ったから承服した。次の学園恋愛小説は、クラスの女の子ほとんど全員が読んでくれたのに綾乃はつまらないとバッサリ斬った。なんでって聞いたら、リアリティがないときた。ちゃんと取材して書いたし設定表を見て綾乃だってあんなに褒めてくれたじゃんって返したら、自分の恋愛から逃げてるって叱られた。たしかに。あたしの書く男の子はかっこよくて優しすぎる。でも、女の子ってそういうのが好きだと思うんだけどなあ。現実にない夢みたいなことを書くってことも、小説には必要なんじゃないのかな? でもな。

  だれもが自分の知っていることについて書けといわれる。ぼくらの多くにとって、問題は、人生の早い時期においてぼくらが何でも知っていると思うことだ

 って、今年でたパパの短編集の序には書いてある。
 そういえば、こないだまでちょっといいなって思ってた先輩にデートに誘われたらきゅうに冷めた。今はどうでもいい。綾乃に呆れられたけど、むこうから来られるとうざったくなる。なんだかわかっちゃうっていうか、楽しくない。小説と似てる。やさしすぎるとつまらない。そう言ったら、あんたって絶対悪い男につかまるよと嘆かれた。好きになってくれる人のほうがいいって言う人の気持ちはわかるけど、いったん手に入れてしまうとそれって大して価値がないみたいに見える。我ながら酷い言い草だ。
 あたし、ママに似てるんじゃないかと思う。こわくて誰にも言えないけど。




ランキングに参加しています。「面白い」と思われましたら押してください。励みになります! 


スポンサーサイト



*Edit ▽TB[0]▽CO[2]   

~ Comment ~

あたしは文章を書くより先に、地図を描く。 

↑これ、磯崎さんがいつかおっしゃていた気がする。
背景設定だけは細部までやる、ってこと。

ってことは、これ、磯崎さんのネタバレ帳?(どんなもんじゃ、それ…(--;)

いや、違う(^^;
そのもの、ずばり、創作ノートであり、創作雑記ですかね。
それを物語るってスゴイ!
いや、つまり雑記ではなくて主人公に語らせて物語に突入してしまう。
うう、素晴らしい、この世界観とゆーか、物語として封じ込めてしまった意識世界。というのか。
ああ、何を言いたいやら、よく分からん(--;

でも、よく分からないけどこうなりそう…とかっていう漠然とした、だけど物語の‘核’のようなものを抱いて、いつも磯崎さんは世界を描かれているんだろう、と思うと、なんだか、やはりこの主人公は磯崎さんであろう、という気がする。

「あんたはうまくやってるじゃないと綾乃には言われそうだけど、あたし、小説を書いちゃう時点でもうダメだと思う。」

↑これ、ものすごく思います。
何もせずに生きていける人は、依存がないし、日常をフツーにうまく渡っていける。
だけど、芸術家は、自らの『欠損』を知っているから、それを埋めるために作品を作るのだ。それはきっといかなる芸術でも同じ。
その中に小説も入っている。
欠損が大きい人ほど、狂気が深くて、そして、実は大芸術家になれるのだ。
満たされないモノを永遠に追い求めるのが、芸術家であり小説家である。
才能って、突出したものじゃなくって、「欠損」なんだと聞いて、ものすごく納得した。
だって、どんだけ素晴らしいモノを生みだす人も、苦しんでいるから。
いや、苦しまないと生まれない。
命を生みだすことと同じだもんね。だから、作品って、作者にとっては赤ん坊と同じなんだろう。

ということを想ったのであった(^^;

Re: あたしは文章を書くより先に、地図を描く。 

> ↑これ、磯崎さんがいつかおっしゃていた気がする。
> 背景設定だけは細部までやる、ってこと。

はい、そうなんですよ!

> ってことは、これ、磯崎さんのネタバレ帳?(どんなもんじゃ、それ…(--;)
> いや、違う(^^;
> そのもの、ずばり、創作ノートであり、創作雑記ですかね。

雑記とかメモとかですかねええ
 
> それを物語るってスゴイ!

いえいえ、そんなことないです~
わりと平凡な手じゃないかと思うけど、違うかしら
 
> うう、素晴らしい、この世界観とゆーか、物語として封じ込めてしまった意識世界。というのか。

ああ、意識世界っていうのはあるかもです

> ああ、何を言いたいやら、よく分からん(--;

いえいえ、いつもすごくよく伝わってきます!

> でも、よく分からないけどこうなりそう…とかっていう漠然とした、だけど物語の‘核’のようなものを抱いて、いつも磯崎さんは世界を描かれているんだろう、と思うと、なんだか、やはりこの主人公は磯崎さんであろう、という気がする。

はい、そうですね
見え過ぎちゃうと書かなくていいやって思うんですよ
あと、現実っていうものと物語世界を同等に重く、むずかしく、みたいんですよね

> ↑これ、ものすごく思います。
> 何もせずに生きていける人は、依存がないし、日常をフツーにうまく渡っていける。

ええ

> だけど、芸術家は、自らの『欠損』を知っているから、それを埋めるために作品を作るのだ。それはきっといかなる芸術でも同じ。

そう思いますねえ
歪さ、みたいなものとか

> その中に小説も入っている。
> 欠損が大きい人ほど、狂気が深くて、そして、実は大芸術家になれるのだ。
> 満たされないモノを永遠に追い求めるのが、芸術家であり小説家である。
> 才能って、突出したものじゃなくって、「欠損」なんだと聞いて、ものすごく納得した。

欠損、ああ、欠けてるもの、でしょうねえ
憶えがありすぎてちゅらいっす><
 
> いや、苦しまないと生まれない。

ほんとですねえ
楽々と書くってないです
愉しいけど苦しい、そんなのばっかりですね
 
> 命を生みだすことと同じだもんね。だから、作品って、作者にとっては赤ん坊と同じなんだろう。

授かりもの、
きっとそうだとおもいます
作品は「他人」と思って書いてます
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)