唐草銀河

「遍愛日記」
俺の妹は小説を書いている

俺の妹は小説を書いている

   俺の妹は小説を書いている。
 それがどうしたと問われたら、先日ついに「BL作家」としてデビューしたとこたえればいいだけのことやもしれん。さらに言うと、デビュー作は俺と浅倉(こいつは大学の後輩だ)がモデルになったそれだ。俺でさえ名前を聞いたことがあるBL雑誌に掲載が決まり、その報告を携えてやってきた。
 そして今、俺の隣で眠っている。
 この、真夜中に。

 あー、
 その、
 なんだ、
 つまり、
 そういうことだ。
 みなまで言わすな、恥ずかしい。

「お兄ちゃん、結婚して! 今日はここに泊まるってお父さんとお母さんに言ってきたから!」

 妹の茉莉は、硬直したままの俺を見かねて、ちゃんと了解とってきたと、結婚したいとも伝えたと言ってのけた。恐ろしいことに、「許可」はおりたそうだ。茉莉いわく、小説家らしい丁寧な観察と入念な読み、渾身の根回しの結果だそうな。そう言いおえた茉莉は晴れやかに、そして誇らしげに笑った。
 そのときすでに俺の腰は抜けていた。

 ところで。 
 ひとつはっきりしたのは、俺が「鬼畜攻め」ではなかったという点だ。
 読者の諸君、すまない。期待を裏切って大変すまなく思う。

「思ってたより大変じゃなかった」

 終わったあと、そんなことを言われてしまった時点で鬼畜は返上せねばなるまい。
 しかも。

「お兄ちゃん、優しいね。すごく、やさしい。優しくしてくれてありがとう。あたし、お兄ちゃんが優しくて、とってもうれしい。しあわせ」

 誰がどう聞こうと、俺がずっと優しくなかったと言い切られているようなものだ。とはいえそれは罷り間違いようもなく真実だがな。だがしかし。最中に、言うか? 本当に、俺の妹はどうしようもなく性格が悪い。
 だが、そんなところも大好きだ。
 ああ、大好きだとも!

 そんなわけで、ここで俺たち兄妹のはなしは唐突に終えたいと思う。
 なに、ただたんに、俺の妹が目をさましそうなだけだ。
 新しい物語の始まりは俺にも一緒に描かせてくれ。
 そう、頭をさげてお願いするべきときだろう。

 俺はかつて、俺と茉莉の幸福を祈ることはないとあるひとへ向けてしたためたが、それは今ここで撤回する。
 俺は、俺と茉莉ふたりの幸福を何かへと希う。茉莉は、俺が不幸ではツライだろう。俺も同じだ。だから両方いっぺんにその幸福を願う。何かへと、希う。そして最大限に努力する。

 そして王子様とお姫様は末永く幸せに暮らしました 

 ひとは変わる。その気持ちは永遠ではない。当たり前だ。
 だが今は、俺はそれを思う存分否定する。
 そう言い切るほどに、茉莉は俺を変えてくれた。
 こういう気持ちがあることを、あったことを、俺は記さずにはいられない。だからこれは俺の手記だ。当然のことながら。

 俺の妹は小説を書いている。
 それも、とびっきりの恋愛小説を。

 さあ、俺のお姫様が目をさました。
 この先は、誰も知らない。知る必要もない。俺たち二人だけの物語(ろまんす)だ。


 了
 



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*Edit ▽TB[0]▽CO[4]   

~ Comment ~

ひょえええええっ 

>あー、
 その、
 なんだ、
 つまり、
 そういうことだ。
 みなまで言わすな、恥ずかしい。

↑これで、すべてが語られてますなぁ。
くううっ、良いっすよ、磯崎さん、良いっ!!!

無駄にテンションがあがってしまった。
こういうハナシ、はい、血の繋がらない兄妹のstoryって何故か、妹が積極的でたくましくって、うだうだ悩むのは兄なんすよね。
多作家さん、ええと、「トレマーズ」の小田切さん作、「火事」にも笑いありほのぼのありでしたが、とあるもっと身近な作家も同じテーマですんげー暗い男の話を描いてました。
そして、兄の杞憂は気苦労に終わるのダ。

ああ、こういう優しいハナシは大好きです。
やはりほっとしますねん。
このカップルがこの世界では一番好きかも。

>茉莉は、俺が不幸ではツライだろう
↑ここにじんとしました。そうだそうだ、それは華麗な真実です。
そして、やはり、茉莉ちゃん。
この名前を抱く子には幸せになってもらいたい。
と、ひどい目に遭わせた張本人がのたまう(ーー;

文学フリマ。
うう、出来ればfateも参加、いや、出店する方じゃなくって、買う方として行って、磯崎さんworldを買いたかったのに。
しくしく。
きっと首都圏近くで華々しく開催されるんだろうなぁ。

でも、きっとそちらが終わったから、ミズキさんが復活? する日も近いであろう。
ふふふふ。

Re: ひょえええええっ 

お返事遅くなってすみません><
ようやく今日休みになったモノでしてやってきました~

いつもわたし軽くお返事を書いてるようですが、fateさんの「読み」に接するのに心身整えておきたいっていう願望があって、凄く丁寧によんでくださるから!


> ↑これで、すべてが語られてますなぁ。
> くううっ、良いっすよ、磯崎さん、良いっ!!!

ありがとうございますー!
ふふふ、あんまり全部語らせないように、でもワカルように、てことで
 
> 無駄にテンションがあがってしまった。

わーいv
 
> こういうハナシ、はい、血の繋がらない兄妹のstoryって何故か、妹が積極的でたくましくって、うだうだ悩むのは兄なんすよね。

あーそうですね、そうかも
妹が悩んでるようで兄の悩みのほうが深いってのはありますね
まあ性的役割ふりわけってのもあるのかなあ

> 多作家さん、ええと、「トレマーズ」の小田切さん作、「火事」にも笑いありほのぼのありでしたが、とあるもっと身近な作家も同じテーマですんげー暗い男の話を描いてました。
> そして、兄の杞憂は気苦労に終わるのダ。

はははは、野郎は暗くて苦労してイイです(←ヒドイ!!
 
> ああ、こういう優しいハナシは大好きです。
> やはりほっとしますねん。
> このカップルがこの世界では一番好きかも。

そうおっしゃってくださってうれしいです
ほっとするはなし、わたしの小説のなかでは少ないですもんね
 
> ↑ここにじんとしました。そうだそうだ、それは華麗な真実です。

ですね!
 
> そして、やはり、茉莉ちゃん。
> この名前を抱く子には幸せになってもらいたい。
> と、ひどい目に遭わせた張本人がのたまう(ーー;

キャラが酷い目に合うのは作者のせいじゃないですよ
うん、みんな幸せにしてあげたいもん
でも出来ない、何故ならそうなっているから
 
> 文学フリマ。
> うう、出来ればfateも参加、いや、出店する方じゃなくって、買う方として行って、磯崎さんworldを買いたかったのに。
> しくしく。
> きっと首都圏近くで華々しく開催されるんだろうなぁ。

あー
そうですね、首都圏なので
いちお公式サイト
http://bunfree.net/
 
> でも、きっとそちらが終わったから、ミズキさんが復活? する日も近いであろう。

うははははは、さすがfateさん、よくおわかりで!
もうちょっと、もうちょっとお待ちくださいませ
いまの連載終わったらとりかかりますから!
> ふふふふ。

おおおお、文学フリマ 

公式サイト教えていただき、ありがとうございました。
行ってみました。
なるほど~
なんか、良いなぁ(^^)

出店は難しいけど、行ってはみたいな、という気になりました。
まぁ、首都圏っすので、なかなかどうなるか分かりませんが。
でも、楽しそうっすね~

>いつもわたし軽くお返事を書いてるようですが、fateさんの「読み」に接するのに心身整えておきたいっていう願望があって、凄く丁寧によんでくださるから!

↑え、そ・・・そんな!
こっちの方がドキドキします~(^^;
でも、コメントよりも返信がfateも力入るときあるかも。特にスルドイ読者さまからのコメントは、一旦目を通しても、時間のあるときにもいっかい戻ってこよう、と思ってしまう。

へへへへ。
でも、そういう関係って戦いみたいで、ちょっと好きです(^^)

Re: おおおお、文学フリマ 

> 公式サイト教えていただき、ありがとうございました。
> 行ってみました。
> なるほど~
> なんか、良いなぁ(^^)

おお、素早い!
面白そうでしょ?
面白いんですよ(笑)

> 出店は難しいけど、行ってはみたいな、という気になりました。
> まぁ、首都圏っすので、なかなかどうなるか分かりませんが。
> でも、楽しそうっすね~

次回は11月18日なので、もしご都合あえばいらしてくださいませ☆
fateさんいらっしゃるとなったら、わたし、張り切っちゃう(なにをだ、なにを!

> ↑え、そ・・・そんな!
> こっちの方がドキドキします~(^^;

えへへへv

> でも、コメントよりも返信がfateも力入るときあるかも。特にスルドイ読者さまからのコメントは、一旦目を通しても、時間のあるときにもいっかい戻ってこよう、と思ってしまう。

そう、そんな感じです!

> へへへへ。
> でも、そういう関係って戦いみたいで、ちょっと好きです(^^)

あ、
そうそう、そういう感性が、ねええ
わたしもそうなのです
真剣勝負! みたいなの好き~
わかるわかる、うん!

またいらしてくださいねv

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