唐草銀河

「美神」
窓掛けの午餐~光と風に戯れる至福の刻~

窓掛けの午餐~光と風に戯れる至福の刻~

   地球を喰らった神々は、その放屁(ゲップだって話もある)で変てこなモノを作り出した。つまり、あたし。意識をもった奇特な物たち。あたしはカーテンのくせに、神々の魔法でできたせいで特技なんかもあるのよ。
 いま、こういう存在は「持物」として「美神」たちに重宝されている。神々の排泄物や食べ残しから、「翼」をつかって失われた地球の美術品を見つけだし、それを「顕現」させる「美神」たち。彼らは遺伝子操作された魔術師にして、金冠の「修復師」。いってみれば、あたし達って銀河の英雄のために誂えられた特別の魔法アイテムよね?
 けどさ、あたしって実は日陰者なの。猫が引っ掻いた跡や汚れがあって見栄えがしない。そのせいかずっと待機中。ほら、神々の作ったものだから廃棄されはしないけど、まさにカーテンらしく窓際族? 暗い倉庫でこのまま永遠に眠らされちゃいそうな感じ?
 自己修復機能もあるけど、なんか、そういうの嫌なのよ。こんなあたしの、本当の姿に気づいて欲しいの! 乙女のようにそう願ってるけどダメかしら? 
 そんなあたしにも日の当たるときがきたのよ! 今日、午後の授業で「持物」の使い方講座の教材にしてくれるんですって。
 憧れの銀河大学の教室。周りには、未だ不揃いながらキラキラした冠を戴いた「美神」候補者たちの姿がある。あたしは胸がドキドキして、ほつれたままの裾が小刻みに揺れている。誰か、このなかのひとりがあたしの潜在能力に気づきますように! そうしたら、その「美神」のためにあたしの本当の姿や、素晴らしい魔法をたくさん見せてあげる!
 そう、思ってたんだけど。
「先生、このカーテン、ちっとも喋らないし、なんか薄汚れてるんですけど」
「ああ、倉庫に埋もれていたものだから」
「じゃあ、『持物』として使われたことがないってことですか?」
 ひとを役立たずみたいに言う前に、仮にも「美神」候補なら、あたしが以前どんなに美しかったかくらい見抜きなさいよっ。
「でもこのカーテン、紫外線やその他のものからも体を守ってくれるみたいだ」
 気づくと、ほつれた裾のあたりに浮かぶ神々の魔法文字を屈んで読む生徒がいた。
「他にも、姿を隠してくれるとか目くらましになるとか……」
 そこまで読めるってことは、あたしはこの子の「持物」だ。講師も気づいたらしく、こちらにそっと目配せをした。
 今はまだ、この男の子みたいなカッコをした彼女に言っちゃいけない。けどいつか、この子が「美神」になる時、あたしは彼女の防具になる。そして、その「翼」のはためきに揺られるだろう。この子の頭の冠は、今は頼りないほど細くて半分しか丸くないけれど、将来のあたしは、お日様のような輝きを燦々と浴びる最高の御馳走にありつけることができそうね!





                      
むかし文学フリマというイベントであった、テレビか何かの企画に提出した掌編三部作です。
お題が「猫、カーテン、教室」だったかな?
これにて完結! 
世界観自体はある程度できあがってて、
しかも、このサイト内にあるおはなしとリンクしてますが、まあそれはいずれ☆

※唐草銀河は2013年11月から月一更新になりました。
 まる三年週一更新の応援いただいたみなさまどうもありがとうございます。
 今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします!
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