唐草銀河

「増田愛音の黒歴史ダイアリー」
楽園を追われましたがどうにかやってます。

■で、今わたし、田宮のお兄さんと付き合ってる。

  なんか唐突なんだけどさ。
ゴールデンウィークにひさかたぶりに地元に帰ったら、田宮とばったり再会したわけ。レンタルビデオ屋さんで。やっぱり連休で戻ってきてるお兄さんと一緒だった。
田宮は女のひとの恰好をしていた。

わたしに話しかけるかどうか迷ったそうだ。姉御って声をかけられて名乗らってもらってようやくわかった。ぱっと見、田宮だってわからなかった。髪の毛とかかなり明るい色だったし、性別がちがってるし。全然ほんとにわからなかった。
二度目に会ったとき(このときは短髪でサラリーマンらしくスーツだった、そこではじめてあれがウィッグだったと知った)そのことを謝ったら、なんで謝るかなあって苦笑された。いや、でも、すぐわからなかったのは悪い気がして、と言葉につまると、増田はほんと変わってなくて可愛いていわれたのでびびった。
かわいい?
可愛いか??
念のため、確認した。
馬鹿って言いたいときに可愛いって言ってごまかしてるわけじゃないよね、と。
田宮は変わらず田宮だった。増田のそういうとこが野生児っぽくて好きだったんだよねー、と笑った。
聞きとがめたわたしに、田宮は容赦なく続けた。やっぱ気づいてなかったか、と。
知らないよ、言ってよ! て思わず上擦った声で叫んだら、でももう兄貴と付き合ってるくせにと突っ込まれてひたすら恐縮した。すみません、肉食で。あのときメアド交換して速攻でお誘いしました。はい。
ちぢこまって俯(うつむ)いてたら、おれもう結婚してるからそんなすまなそうな顔しなくていいよ、と吹き出された。そのときはじめて気づいたけど、田宮の左手の薬指にはプラチナの輪がおさまっていた。奥さんは元コスプレイヤーだって教えてくれた。赤ちゃんがいるからお休みしてるってことだった。あの日はだから、奥さんは実家に帰ってたらしい。
 
田宮は、身体はいじらない、たんに趣味だしって言った。わたしが、いじるって手術するっていう意味だよね、て尋ねたら笑われた。ごめん、でも、わからないんだもん。
わたしは女になるのがイヤだったのに、ここに恰好だけでもなりたいひとがいるんだなあってことがなんだか新鮮だった。
 
だからというわけじゃないけど、田宮には十四、五歳の暗黒時代について話した。そしたらすごく面白がってくれて、わたしもいい気になって、すすめられたとおりに日記に書いてみた。
田宮は何でも書いていいよって笑った。秘密にするつもりないから、て。
そのまんまはさすがにまずいから、少しだけ変えたけどね。

はなしの流れで中原の名前もでた。中原は去年、地元へお嫁さんを連れて越してきたらしい。沙織ちゃんはもう、三人のこどもがいるそうだ。大学から都会に出て就職もそこでしたわたしは知らないことばかりだった。

田宮は早く大人になりたかったってくりかえした。わたしが楽園だと思ってたところが地獄だったって。女の子みたいて言われるのが大嫌いだったそうだ。いまはそのころの反動がきてるって口にした。そんな単純なものじゃなさそうだったけど、わたしは黙って聴くだけにした。

田宮はそういうわたしをじっと見て、増田は男でも女でもなく、まして人間だってことよりも前に「自分」じゃなきゃ嫌なタイプだよね、と微笑んだ。うん、と深くふかく頷いた。根本的に、どうも、そういうふうにできてるみたい。

そうだ。
わたしの「楽園を追われた」って例の台詞にしみじみ共感してくれたのは、田宮のお兄さんです。
そんなわけで、楽園は追われたけど、どうにかやってます。お誂え向きにふたりだしね。

あ、もしかして、どうやって付き合ったのかとかも書いたほうがいい?
実は、ふたりでUFO見ちゃったからなんだけど。
え? そっちの話しのほうがよかった? ごめん、そうかも……。
いつか、それも披露できたらいいね。
最後まで読んでくれてどうもありがとう!

                      了


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