唐草銀河

恋人たちの物語~「心臓を食べさせられた奥方」の私的解釈における五つの断章~

*騎士の懇願――牢獄に繋がれて

  叔父上、どうか私のはなしを信じてください。そして御慈悲を賜りたいのです。敬愛する叔父上の奥方に私が横恋慕することなどありましょうか。まして私から誘惑することなど、そのような破廉恥な振る舞いをするはずもありません。

 奥方の服の袖が私の部屋から?

 叔父上、それは何かの間違いです。誰かが私を陥れるためにそれを運び入れたのに違いない。私の姿を奥方の寝室で見たものがいるというのも見間違いではありませんか? でなければ、え……?

 奥方は私の心臓を食べたと思い身を投げられたというのですか?

 なにゆえそんな恐ろしい偽りをあの方に……。

 叔父上、ですから私はっ。

 では、その侍女とやらをお呼びください。私の姿を奥方の寝室で見たというものを。

 たしかに奥方に詩を捧げました。しかしそれは騎士の嗜みでございます。誓ってそれ以上のことはございません。

 叔父上は血の繋がった甥の私より、ただの侍女の言うことを信じられるのですか? ともかく、一刻も早くこの枷を外して私を自由にしてください。もう馬上槍試合になど出たくもありません。早く自分の領地に戻りたい。こんな侮辱を受けては騎士としての名折れです。これ以上の振る舞いに及ばれるなら、いくら叔父上といえ私だとて……、

 え? なぜ奥方が死ななければならなかったのか、そんな……、そんなことは私にはわかりません。わかるわけがないではありませんか。本当です。私は何も知りません。

 叔父上、もういいかげん解放してください。私は馬上槍試合のためにここに来たのです。こんな惨(むご)い目に遭わされては我が父も、そしてもちろん叔父上の妹たる母も黙ってはおりませんぞ。

 ええ、もちろん、あの麗しい奥方が亡くなられたのは残念なことだと思っております。しかし、それとこれとは、

 う、痛いっ、なんて乱暴な……奥方と寝てなどいません、本当ですっ。私は何も知りませんっ、離せっ、やめ……くださいっ。

 話します、はなしますのでっ、これ以上はもう、やめさせてください。もう、もう……耐えられません……。

 ……奥方に誘われたのは事実です。されどこの身は潔白です。私は童貞です。女を知りません。神かけて誠のことにございます。

 叔父上?

 おじうえ、いま、なんと?

 

いきながらしんぞうを、そうおっしゃいましたか。

 お、じうえ? まさか、ほんとうに、この私にそんな仕打ちを? そんなことをしたら戦になりますぞ。

 おじうえ? 

 叔父上、お待ちくださいっ、おじうえっおじうえ、おまちください、まさか、そんな、本気でいらっしゃいますか、おじうえ、おじうえっ……やめさ、て、くだっ、あああああああああああ

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